うつ病で自殺した損害賠償
<事例>
買入担当者である太郎さんは、一桁多い誤発注をして会社に大損害を与えるおそれが生じ、連日深夜残業をして収拾を図りましたが事態は解決できませんでした。
上司は容赦なく圧力をかけ、1ヵ月後に太郎さんは心身に変調をきたしてうつ病になってしまい、社屋の屋上から飛び降り自殺をしてしまいました。
この自殺は業務上災害と認定され、遺族はうつ病の責任は会社にあるとして損害賠償を求めました。
ところが上司は、太郎さんが自殺してはじめてうつ病にかかっていたことを知ったとして、会社に責任はないと主張しました。 |
上司は太郎さんの異変に気付かなかったと言っていますが、少し注意をすれば把握できた可能性が高いと考えられ、さらに、太郎さんの業務が過重であったことは認識していたはずですので、上司の管理が不十分ということで、会社としての安全配慮義務違反は免れないと考えられますから、何らかの損害賠償をしなければなりません。
会社は、社員を働かせるうえで、その生命や身体を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っていますから、自殺の場合も、それが労働に起因するものであり、自殺に至った過程で使用者に安全配慮義務違反があったとすれば、「生命の危険を保護する義務を怠った」ということで損害賠償責任を負うことになります。
社員の自殺をめぐって、会社の責任について争われた事例では、次の点で判断がなされています。
@自殺について、労働以外の要因があったか否か
A会社が社員の異常に気がついていたか否か
B会社が社員の異常に対し、何らかの措置をとったか否か
C自殺に至るまでの労働が過重であったか否か |
会社としては、安全配慮義務違反を免れるには、社員に過度の業務を命じないこと、一時的に業務が過重となるときは社員の勤務態度や言動の異常に注意すること、異変が発見された場合はただちに医師の診断を仰ぎ、必要に応じて業務の軽減や環境を変化させるなどの配慮をすることが必要になります。
自殺と仕事の因果関係が認められた判例として、広告会社の社員の自殺を「長時間労働とうつ病と自殺との間には相当因果関係があり」、その上司には、長時間労働と健康状態の悪化を知りながら、それを軽減する具体的措置をとらなかった安全配慮義務違反があるとしました。
また、判例で、製鐵所の新入社員の自殺を「出張先のインドでの生活自体からもたらされるストレスと業務上のトラブルによるストレスとが重なり、心因性精神障害を惹起し、その結果心神喪失の状態で自殺に至ったもので、業務起因性が存在する」としました。
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