出向先での事故で損害賠償
<事例>
関連会社から在籍出向したきた太郎さんは、製造部門で働いています。
太郎さんは、ある日ベルトコンベアに指を挟まれて重症を負ってしまいました。
原因はベルトコンベアの故障で、会社が定期点検を行なっていれば、容易に発見できた故障でした。
太郎さんは、出向先の会社に点検を怠ったと安全配慮義務違反を根拠に損賠賠償請求をしました。
しかし、出向先会社は、在籍出向者の太郎さんとは直接の雇用関係にないから、安全配慮義務を負っているのではないと反論してきました。 |
本件の場合、出向先会社の安全配慮義務違反は明らかで、太郎さんとしては、債務不履行と不法行為のいずれかまたは両方を根拠に損害賠償をすることができます。
在籍出向の場合、出向者との雇用関係は、出向先ではなく出向元にあり、その限りでは出向元会社が第一次的に安全配慮義務を負うように思えますが、労務提供の具体的な指示、勤務場所や勤務時間などの指示を出したり、機械・器具の提供を行なうのは出向先です。
安全配慮義務とは、「使用者の具体的な労務指揮または機械、器具などの提供にあたって、その指示または提供に伴って労働者の生命及び健康に被害が発生しないよう配慮すべき義務」のことをいいます。
ですので、出向先は、出向者と直接の雇用関係になくとも安全配慮義務を負っており、これは、労働派遣法に基づいて派遣される派遣社員についても同じです。
ただし、出向元や派遣元が全く安全配慮義務を負っていないというべきではなく、出向先や派遣先が安全配慮義務を尽くしていないのを知りながら放置しているような場合には、具体的な労務指揮を行なっていなくても、安全配慮義務が問われることになります。
出向先が一次的な安全配慮義務を負うということが、出向元の安全配慮義務違反を免罪するわけではないのです。
本件の場合、出向元は出向先の安全配慮義務違反を知りえなかったと考えられ、太郎さんは債務不履行と不法行為のいずれかまたは両方を根拠に、出向先のほうに損害賠償を請求すべきなのです。
判例では、「下請企業のYさんは、注文者の事業場の社外工として出向した。
そして注文者が管理する設備、工具などを用い、事実上注文者の指揮監督を受けて働き、作業内容も注文者の従業員である本工と大差ないほどであった。
こういう事実関係の下においては、注文者は、Yさんと特別な社会的接触の関係に入ったといえる。
そこで、注文者は、Yさんに対して信義則上、安全配慮義務を負う」としました。
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