宿直中に強盗が入り損害賠償
<事例>
勤務先の宝石販売会社では、夜間の防犯を警備会社に委託していたのですが、契約期間が終了してからは、しばらく社員を交代制で宿直させていました。
太郎さんも警備に当っていたところ、その夜に店に強盗が入り、全治1ヶ月の怪我を負わされました。
店舗は夜間には人通りがほとんどなくなり、防犯設備もないも同然でした。
太郎さんは、会社が十分な防犯設備を整えていなかったから強盗が入り、怪我を負わされたのだとして、会社に損害賠償を求めました。 |
本件の場合、会社は十分な防犯体制をとっていなかったと考えられ、太郎さんの言うとおり、安全配慮義務違反の責任を免れないと考えられます。
会社は、社員が仕事をする上で生命や身体などが危険にさらされないように保護する義務である安全配慮義務を負っています。
会社が故意にせよ過失にせよ、安全を配慮する義務に違反したために社員が怪我をしたり病気になったり、または死亡したりした場合には、会社は債務不履行として損害賠償を負うことになります。
本件のように、第三者の行為によって社員が負傷した場合、会社の安全配慮義務違反の有無を判断するには、配慮が十分でなかったこと、第三者のよる加害行為との間の相当因果関係の有無が問題となります。
宝石販売業を営んでいますから、強盗が侵入し、社員がこれを発見した場合には侵入者が社員に危害を加えるおそれがあることは容易に想像できます。
会社には、店に強盗が侵入することの予見可能性があったものであり、予見が可能であれば、相当因果関係が認められ、それにもかかわらず十分な防犯体制をとっていなかった会社は、安全配慮義務違反の責任を免れることはできないのです。
判例では、「使用者は、宿直勤務中に盗賊などが容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は、盗賊から加えられるかもしれない危害を免れることができるような物的施設を設ける」とことが必要としたものがあります。
また、使用者は「これら物的施設などを十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか、宿直員に対する安全教育を十分に行うなど」しなければならないとしています。
そして「もって右物的施設などと相まって、労働者の生命、身体などに危険が及ばないように配慮する義務がある」と、使用者に万全の配慮義務を負わせています。
会社が必要な設備や用具を準備しないがために社員が怪我をしたり病気になったりすると、会社は安全配慮義務違反を免れないのです。
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