お茶くみ拒否で減給処分
<事例>
花子さんは社長とちょっとした口論になった数日後に、社長から「お前一人でお茶汲みをやれ」と命令されました。
会社では男性社員と女性社員の比率が3:1で、通常は内勤の女性社員が交替でお茶くみをしており、花子さんは外回りの営業担当で、これまでお茶くみをしたことはありませんでした。
花子さんは、「本来の業務にお茶くみは含まれていません」と拒否したところ、社長は業務命令違反として、花子さんを減給処分にしました。 |
この場合の社長の業務命令は無効であり、会社が花子さんを減給処分することはできません。
ただし、業務命令権の濫用に当たらない限り、会社は本来の仕事以外の仕事も社員に命じることはできます。
労働契約を結ぶことにより、会社は社員に賃金を支払うことの対償として、業務命令権を有することになり、社員は契約の内容と趣旨に従った労務の提供を行なわなければなりません。
業務命令の内容は労働契約に基づくものですが、毎日の業務に関する具体的な内容を、契約時に全て特定することは事実上不可能ですので、契約の内容と趣旨に従ったものである限り、命令権の範囲は広く有効と解されます。
例えば、本来は運転手として職務についている社員を臨時に営業補助職につけるようなことも原則として認められます。
ただし、この業務命令権は無制限に行使できるものではなく、不当な目的で使われたり、権利の濫用にあたる場合には、命令は無効となります。
判例では、かつて国労マーク入りのベルトを着用していた社員に対して、本来の業務を一切外し、就業規則の機械的書き写しを命じた業務命令が「人格権を侵害する不法行為」だと認定した判例があります。
本件の場合、本当にお茶くみという作業が業務の遂行上必要性があると認められるのであれば、これを命ずることは、一般的には正当な業務命令と考えられます。
しかし、それまでは内勤の社員が交替で行なっていた作業を、突然内勤社員でない者一人で行なわせることは、この命令が出されることになったいきさつからしても不当な目的による命令であると考えられます。
また、お茶くみが業務の遂行上不可欠なものであるとは考えられず、これを業務命令とするのは権利の濫用であるとも考えられますから、こうした業務命令は無効であり、会社が花子さんを懲戒処分にすることもできないのです。
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