複数の組合の不当労働行為の判例
<判例>
X会社は訴外A会社を吸収合併した。
この過程で、AのZ組合のうち多数の組合員の脱退があり、Zは152名に減少し、他方、新たに結成された7500名のB組合が併存することとなった。
合併後、BはXのC組合に加入し、当該工場の支部となった。
もともとZは、時間外労働や夜間労働に反対の姿勢をとっていたため、Xは、Cとの間で、二交代制・時間外勤務協定を締結し、新組合の組合員にのみ時間外労働を計画的に命じる一方、Zには、間接部門の労働者も含めて、一切の残業を命じなかった。
そのため、実所得が減少することになり、Zも、時間外勤務協定の締結を求めて団体交渉を行なったが、二交代制(夜間勤務)の受け入れをめぐって交渉が妥結しなかったため、残業ができず、実所得に格差が生じた。
そこで、Zが不当労働行為の救済を求めたところ、Y(中労委)では、地労委のXに対する救済命令を維持したため、Xは、その取り消しを求めて提訴した。
一審は救済命令を取消したものの、二審は一審判決を取消したため、Xが上告したのが本件である。
「複数組合併存下にあっては、各組合はそれぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されているものであるから、その当然の帰結として、使用者は、いずれの組合との関係においても誠実に団体交渉を行なうべきことが義務付けられているものといわなければならず、また、単に団体交渉の場面に限らず、すべての場面で使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによって差別的な取扱をすることは許されないものといわなければならない」。
「複数組合併存下においては、使用者に各組合との対応に関して平等取扱、中立義務が課せられているとしても、各組合の組織力、交渉力に応じた合理的、合目的的な対応をすることが右義務に反するものとみなされるべきではない」。
「したがって、以上の諸点を十分考慮に入れた上で不当労働行為の成否を判定しなければならないものであるが、団体交渉の場面においてみるならば、合理的、合目的的な取引活動とみられうべき使用者の態度であっても、当該交渉事項については既に当該組合に対する団結権の否認ないし同組合に対する嫌悪の意図が決定的動機となって行なわれた行為があり、当該団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行なわれているものと認められる特段の事情がある場合には、右団体交渉の結果としてとられている使用者の行為についても労組法7条3号の不当労働行為が成立するものと解するのが相当である」。
(日産自動車事件 最三小判昭和60・4・23 判時1155)
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