リストラの判断の判例
<判例>
Xは、英国法に基づき設立されたY銀行のグローバル・トレード・バンキング・サービス(GTBS)のアジア・パシフィック部門で、アシスタント・マネージャーとして貿易金融業務に従事していた。
Yが属する金融グループは、国際競争の激化にともない、平成9年に貿易業務から撤退することを決定した。
そこで、Yは、Xに対して再就職活動の援助や特別退職手当等の条件を提示して合意解約を申し入れたが、Xはこれを拒絶した。
Yはその後も、Xが所属する労働組合と交渉を行ない、関連会社で賃金が半減する一般事務職(クラーク)への異動を提案したが、Xはこれも拒否した。
そこで、Yは同年9月、Xに解雇の意思表示をした。
Xは地位保全仮処分を申請したところ、第一次申請及び第二次申請のいずれも同申立を認容し、さらに第三次申請に至ったのが本件である。
「現行法制上の建前としては、普通解雇については解雇自由の原則が妥当し、ただ、解雇権の濫用に当たると認められる場合に限って解雇が無効になるというものであるから、使用者は、就業規則所定の普通解雇事由に該当する事実が存在しなくても、客観的に合理的な理由があって解雇権の濫用にわたらない限り雇用契約を終了させることができる理である。
そうであれば、使用者が、就業規則の普通解雇事由を列挙した場合であっても、限定列挙の趣旨であることが明らかな特段の事情がある場合を除き、例示列挙の趣旨と解するのが相当である」。
「GTBS部門閉鎖の決定は、グループのいわゆるリストラクチャリング(事業の再構築)の一環として行われたものであることが認められるところ、リストラクチャリングは、限られた人的・物的資源を戦略上重要な事業に集中させ、不採算事業を縮小・廃止し、もって、資本効率の向上、競争力の強化を図ることを目的とするものであり、このような事業戦略にかかわる経営判断は、それ自体高度に専門的なものであるあるから、基本的に、株主によって選任された執行経営陣等、企業の意思決定機関における決定を尊重すべきものである」。
「いわゆる整理解雇の四要件は、整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって、各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく、解雇権濫用の判断は、本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものである」。
(ナショナル・ウエストミンスター銀行事件 東京地決平成12・1・21 労判782)
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