有給休暇の時季変更の判例
<判例>
通信社Yに勤務するXは、昭和55年6月23日に、上司に対して口頭で、8月20日から1ヶ月ほどの休暇を申し入れた上、6月30日に休暇及び欠勤届を提出した(8月20日から9月20日までの有給休暇の時季指定)。
Xは科学技術関係の担当であったが、同社で科学技術記者クラブに所属していたのはXのみであったこと(単独配置)などから、Yは、前半の2週間については承認したが、後半の2週間について、時期変更権が行使されたものの、Xは欠勤し、これが就業規則上の懲戒事由に該当するとして、けん責処分に処せられ、また、賞与についても減額された。
そこで、けん責処分の無効確認と賞与の支払を求めて提訴した。
「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障をきたす蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等と事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。
しかも、使用者にとっては、労働者が時季指定をした時点において、その長期休暇期間中の当該労働者の所属する事業場において予想される業務量の程度、代替勤務者確保の可能性の有無、同じ時季に休暇を指定する他の労働者の人数等の事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、これを正確に予測することは困難であり、当該労働者に休暇の取得がもたらす事業運営への支障の有無、程度につき、蓋然性に基づく判断をせざるを得ないことを考えると、労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。
もとより、使用者の時季変更権の行使に関する右裁量的判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法39条に趣旨に沿う、合理的なものでなければならないのであって、右裁量判断が、同条の趣旨に反し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理である認められるときは、同条3項但書所定の時季変更権行使の要件を欠くものとして、その行使を違法と判断すべきである」。
(時事通信社事件 最三小判平成4・6・23 民集46巻4号)
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