労働組合の労働協約の判例
<判例>
Xらは、自動車教習所を経営するYの従業員であった。
Yには、Xらが所属するA労組のほか、B労組が存在する。
Yは、平成3年度に5000円のベースアップとともに新賃金体系を導入しようとし、Bはいずれの条件にも同意したものの、Aは新賃金体系について同意せず協定書の作成に応じなかった。
同年以降も、同様の状況であったため、Yはベースアップ分を、B組合員と非組合員のみに支給した。
Xらは、YとAとの間でベースアップを行なう労働協約が成立しているとして、差額賃金等を請求した。
地裁(横浜地判平成8・6・13 労判706)及び高裁(東京高判平成11・11・22 労判805)は、労働協約が書面化していない場合でも労働協約としての効力が生じることを認めた。
そこで、Yが上告したのが本件である。
「労働協約は、利害が複雑に絡み合い対立する労使関係の中で、関連性を持つ様々な交渉事項につき団体交渉が展開され、最終的に妥結した事項につき締結されるものであり、それに包含される労働条件その他の労働者の待遇に関する基準は労使関係に一定期間安定をもたらす機能を果たすものである。
労働組合法は、労働協約にこのような機能があることにかんがみ」、16条の規定を定めているほか、17条で一般的拘束力を定め、労基法92条で就業規則が労働協約に反してはならないこと等を規定している。
「労働組合法14条が、労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、または記名押印することによってその効力を生ずることとしているゆえんは、労働協約に上記のような法的効力を付与することとして以上、その存在及び内容は明確なものでなければならないからである。
・・・そこで、同条は、書面に作成することを要することとするほか、その様式をも定め、これらを備えることによって労働協約が成立し、かつ、その効力が生ずることとしたのである。
したがって、書面が作成され、かつ、両当事者がこれに署名しまたは記名押印しない限り、仮に、労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても、これに労働協約としての規範的効力を付与することはできないと解すべきである」。
(都南l自動車教習所事件 最三小判平成13・3・13 民集55巻2号)
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