採用時の健康診断の判例
<判例>
Xは、平成9年度のY公庫の新卒者採用選考に応募した。
採用選考の一環である同年6月の健康診断で肝臓の数値が高かったため、Xに対して同月に再検査と再々検査が実施された。
再々検査の際、B型肝炎ウイルス感染の有無を判定するための検査が含まれていたが、Yからも医療機関からも、Xに対し、検査内容は告げられなかった。
7月初旬、担当医師はYに対し「XにはB型肝炎ウイルス感染による肝炎の所見がある」旨伝え、同月23日にはXに対してもB型肝炎ウイルス感染による活動性肝炎の事実が告げられた。
9月30日、XはYから不採用の通知を受けた。
Xは、不採用通知は、XがB型肝炎ウイルスに感染していることのみを理由とする不合理な内定の取消または内々定取り消しであり、これにより雇用契約上の権利または雇用される期待権を侵害されたほか、YがXに無断でB型肝炎ウイルス感染を判定する検査を受けさせた行為により精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた。
「平成9年当時、B型肝炎ウイルスの感染経路や労働能力との関係について、社会的な誤解や偏見が存在し、特に求職や就労の機会に感染者に対する誤った対応が行われることがあったことが認められるところ、このような状況下では、B型肝炎ウイルスが血液中に常在するキャリアであることは、他人にみだりに知られたくない情報であるというべきであるから、本人の同意なしにその情報を取得されない権利は、プライバシー権として保護されるべきであるということができる」。
「企業は、特段の事情がない限り、採用に当り、応募者に対し、B型肝炎ウイルス感染の血液検査を実施して感染の有無についての情報を取得するための調査を行っておらず、調査の必要性が存在する場合でも、応募者本人に対し、その目的や必要性について告知し、同意を得た場合でなければ、B型ウイルス感染についての情報を取得することは、できないというべきである」。
(B金融公庫事件 東京地判平成15・6・20 労判845)
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