ロックアウトの賃金請求の判例
<判例>
Y会社の従業員で組織されているA労働組合は、賃上げを要求して団体交渉を行い、妥結に至らなかったことから、昭和34年5月19日の午前8時30分、争議行為を行う旨をYに通告した。
同日から同月22日にかけて、Aは、Yないしその役員を誹謗するなどの内容のビラを、工場、事務室等の窓ガラス、壁等に貼り付け、そのため、保安室は、外光が著しく減ずる有様となった。
また、組合員は、その間、事務所内で喚声をあげてデモ行進をしたりするなどした。
同月22日頃から怠業状態が現れはじめ、作業能率が低下した。
23日には、巡回中の職制に対してハンマー等が投げつけられるなどし、同行した保安係員が負傷する事態が発生した。
Yは、これらの争議行為等により作業能率が著しく低下し業務の遂行が困難になったので、このままの状態では会社の経営に危殆を招く恐れがあるとして、6月2日、ロックアウト(作業場閉鎖)通告をした。
そこで、Aの組合員であるXらが、ロックアウト期間中の賃金の支払を求めて提訴したのが本件である。
「争議権を認めた法の趣旨が争議行為の一般市民法による制約からの解放にあり、労働者の争議権について特に明文化した理由が専らこれによる労使対等の促進と確保の必要に出たもので、窮極的には公平の原則に立脚するものであるとすれば、力関係において優位に立つ使用者に対して、一般的に労働者に対すると同様な意味において争議権を認めるべき理由はなく、また、その必要もないけれども、そうであるかといって、使用者に対し一切争議権を否定し、使用者は労働争議に際し一般市民法による制約の下においてすることのできる対抗措置を取りうるにすぎないとすることは相当ではなく、個々の具体的な労働争議の場において、労働者側の争議行為によりかえって労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められる限りにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認されると解すべきである」。
「労働者の提供する労務の受領を集団的に拒否するいわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、使用者の争議行為の一態様として行われるものであるから、それが正当な争議行為として是認されるかどうか、換言すれば、使用者が一般市民法による制約から離れて右のような労務の受領拒否をすることができるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側に受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認め得る場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるものといわなければならない」。
(丸島水門製作所事件 最三小判昭和50・4・25 民集29巻4号)
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