赤字で解雇の判例
<判例>
Yは、酸素等の各種高圧ガスの製造販売を業とする会社であり、Xら13名は、アセチレン部門で勤務していたところ、同部門は需要の低下等により赤字に転落し、昭和44年下期に総額44億円の累積赤字を計上した。
そこでYは、川崎工場のアセチレン部門の閉鎖を決定し、翌年に就業規則の「やむを得ない事業の都合によるとき」の規定に基づき、Xらを含む同部門の従業員全員を解雇する旨の意思表示をした。
その際に、Yは、Xらを他部門へ配転することや希望退職募集の措置を講じなかった。
Xらは地位保全仮処分等請求を行ったのに対して、原審は解雇回避措置が不十分であるとして請求を認容したため、Yが控訴した。
解雇が「「やむを得ない事業の都合による」ものに該当するといえるか否かは、企業側及び労働者側に具体的事情を総合して解雇に至るのもやむを得ない客観的、合理的理由が存するか否かに帰するものであり、この見地に立って考察すると、特定の事業部門の閉鎖に伴い右事業部門に勤務する従業員を解雇するについて、それが「やむを得ない事業の都合」によるものといい得るためには、第一に、右事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものと認められる場合であること、第二に、右事業部門に勤務する従業員を同一または遠隔でない他の事業場における他の事業部門の同一または類似職種に充当する余地がない場合、あるいは右配置転換を行ってもなお全企業的に見て剰員の発生が避けられない場合であって、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に使用者の恣意によってなされるものでないこと、第三に、具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること、以上の3個の要件を充足することを要し、特段の事情のない限り、それをもって足りるものと解するのが相当である」。
「なお、解雇につき労働協約または就業規則上いわゆる人事同意約款または協議約款が存在するにもかかわらず労働組合の同意を得ずまたはこれと協議を尽くさなかったとき、あるいは解雇がその手続上信義則に反し、解雇権の濫用にわたると認められるとき等においては、いずれも解雇の効力が否定されるべきであるけれども、これらは、解雇の効力の発生を妨げる事由であって、その事由の有無は、就業規則所定の解雇事由の存在が肯定された上で検討されるべきものである」。
(東洋酸素事件 東京高判昭和54・10・29 労民集30巻)
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